みなさん、こんにちは。
令和2年(2020年)1月20日より、ものづくり補助金の事務局募集が始まっています。
令和元年度補正予算「中小企業生産性革命推進事業」に係る補助金事務局の募集が開始されました
※事務局を募集するものですから、ものづくり補助金に申請する申請者の公募ではありません。
事務局の公募締切は2月14日。前年までの実績を鑑みると、2月末までには事務局が決定、その後2週間から3週間後の3月中旬頃には、ものづくり補助金の一次公募が開始されると推測します。
さて、この事務局公募要領ですが、未確定部分も残しつつ、ものづくり補助金の公募内容(現時点の。正式には3月頃の公募開始時に発表)が事前に公開されています。
ちなみに前回の記事では、2019年12月13日の閣議決定を受け発表された経産省のPR資料を基に解説しました。
- 3か年予算が確保されたため、向こう3年間はものづくり補助金の公募はありそう
- 「複数の締切が設けられる」という記載に加え、「都合の良いタイミングで申請・事業実施することが可能」という表現から、2回を超える公募回数の可能性が見込まれる
- 基本要件であった、経常利益年率1%は消滅。付加価値年率3%増は継続。
- 新たな要件として、給与総額年率1.5%増加(3年計画なら3年後に4.5%増加)が加わった
- 加点要件(もの補助申請に加点)や、基本補助率である1/2から2/3へ補助率をアップする要件であった「経営革新計画」「先端設備等導入計画」「事業継続力強化計画」などの記載はなし。つまり、加点や補助率アップに関する点は不明
- 今回の公募から行政プラットフォームであるJgransを使っての電子申請に統一。JGrantsを利用するためには事前にgBizIDの取得が必要。
今回の事務局募集の公募要領では、以前の記事よりも少し見えてきた部分がありますので、ここではそれらについて解説していきたいと思います。
特に、申請書のレベルが全体的に上がってきた昨今、加点項目をいかに満たしていくかという部分の重みづけが年々高くなっています。加点項目については重点的に説明していきたいと思います。
この記事の目次
前回よりも小刻み(3か月ごと)な締切が設定
事務局の公募要領では、例年その時点で判明しているものづくり補助金の概要が示されているのですが、今年の公募要領では以下のような内容が記載されています。
複数回で3か月ごと程度に1回ずつ採択発表を予定
3か月ごとに1回採択発表を行うということは、年間4回の採択発表。つまり4次公募まで予定しているということになりますね。
ちなみに、この複数回公募。前年までの事務局公募要領ではこのような表現でした。
複数回ということでしたが、前年(2019年実施)は例年通り2次公募までで終了となりました。
今年の公募要領では、具体的に3か月に1回という表現が入ってきていますので、少なくとも前年度を超え、年間3回以上最大4回程度の公募があるものと思われます。
加点要件は主に4つに分類、加点要件から先端設備等導入計画策定は消えた?
現在のところ、以下の加点要件が記載されています。前年まで加点要件として存在していた先端設備等導入計画の記載は確認できていませんが、事業継続力強化計画の取得は昨年の二次公募同様加点になります。
加点項目は大きく4つ。それぞれを満たすことで、個別に加点される模様。
以下、各項目ごとの解説を記載します。
1.成長性加点:経営革新計画の取得
経営革新計画の取得は、前年度までと同様、加点項目として健在です。
経営革新計画とは、各都道府県が認可する「革新的な取り組み」を承認する制度のことを指しています。承認事務局は各都道府県ですので、これから申請を検討される方は各都道府県に問い合わせてみてください。
さて、ここでは以下のように記載されています。
有効な期間の経営革新計画の承認(申請中を含む)を取得した企業
ここでの「有効な期間」ですが、前年度までの定義を踏襲すると、以下のような定義となります。
内閣の閣議決定後に承認を受けている
今回(令和2年、2020年実施)のものづくり補助金の予算は、2019年12月13日に閣議決定されています。前年度通りの定義であれば、2019年12月13日以降に承認を受けていることが条件となります。
ものづくり補助金の補助事業期間を内包していること
一般的に、ものづくり補助金の補助事業期間は(交付決定~設備導入~完了報告書提出)の期間を示していますが、この期間が、経営革新計画で設定した事業期間に入っていることが条件となります。
基本的に、経営革新計画は3年~5年の計画期間で作成する事業計画書ですので、自然に経営革新計画の期間に内包されると思います。
よって、重要なのは2019年12月13日以降に経営革新計画を取得していること、となりますね。
なお、ものづくり補助金の応募時には認可前でも「申請中」であれば大丈夫です。
※ただし、もの補助採択後、交付決定を受けるまでには認可を受けておく必要があります。
2.政策加点:小規模事業者、創業・第2創業から5年以内の事業者
小規模事業者(常時雇用の従業員数:商業サービス業5名、製造業その他20名以内)は、前年同様加点処置が取られます。
小規模事業者の定義詳細「中小企業庁」(外部リンク)
小規模事業者、又は、創業・第二創業後間もない企業(5年以内)
今回からは、創業者も加点になっていますね。ちなみに第二創業とは、事業承継を契機として新たな事業展開に挑戦する事業(小規模企業振興基本計画より)が対象となりますが、この点については今後詳細が明らかになると思います。
3.災害加点:2019年激甚災害指定地域事業者、または事業継続力強化計画認定事業者
2019年(令和元年)の台風の影響で激甚災害指定地域の被災事業者は自動的に加点されます。
昨年の激甚災害(台風15、19、20、21号)指定地域の被災事業者、又は、有効な期間の事業継続力強化計画の認定(申請中を含む)を取得した企業
または、自然災害に対する事前対策を記載した事業継続力強化計画を各市区町村へ提出した場合も対象となります。
経営革新計画の承認機関が、各都道府県であったのに対し、事業継続力強化計画は各地域の経済産業局になります。
4.賃上げ加点等:給与支給総額を基本要件以上に増加
今回から加わった賃上げの基本要件である「給与総額年率1.5%向上、かつ事業所内最低賃金を地域別最低賃金より30円向上」から、1.さらに上回る賃上げの計画を作成した場合、または、2.制度改革に先立ち、任意適用に取り組む場合、のいずれかの取り組みを行うことで加点となります。
事業計画期間において、給与支給総額を年率平均2%又は3%以上増加させる計画を有し、従業員に表明している企業、並びに、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+60円又は+90円以上の水準にする計画を有し、従業員に表明している企業(賃金の引上げ幅に応じて段階的に加点)、被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業・小規模事業者等が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合
ざっくり2通りの選択肢がありますので以下解説します。
選択肢①給与支給総額を2%・3%アップ、かつ最低賃金を+60円、+90円
基本要件では、給与支給総額年率1.5%アップ、かつ最低賃金プラス30円が条件でしたが、それよりもさらに上回る目標を設定した計画を提出することで加点になるようです。
加点数は、上昇額が2%なのか3%なのか、また+60円なのか+90円なのによって、異なってくるようですね。
ここでポイントとなるのが、
- 基本要件(1.5%、+30円)では実績も追われるが、加点要件は「計画策定&従業員に表明」のみ、実績までは問われない
という点です。
基本要件では、実態として達成していない場合、補助金の返還ルールが設けられていますが、加点要件ではそこまで求められていません。
選択肢②制度改革に先立ち、任意適用に取り組む場合
これは、非常にザックリ説明すると、現在健康保険の加入義務のない事業者が加入する場合に加点、ということです。
基本的に法人であれば、強制的に適用されるので、主な対象は個人事業主となりますね。
給与支給総額を基本要件以上に増加させる計画の策定がポイント
つまり、この賃上げの加点要件を満たすためには、人件費を基本要件以上に向上させることが重要になりそうです。
結構なハードルですね。
補助率2/3アップ要件は今のところ記載なし
昨年までの公募要領では、1/2の補助率を基本としつつ、「経営革新計画」もしくは「先端設備等導入計画」の提出を行うことで補助率が2/3にアップする内容が盛り込まれていました。
しかし、今回の事務局公募要領では、補助率2/3へのアップ条件の記載が見当たりません。
小規模事業者に関しては2/3が適用されそうですが、一定の従業員規模(商業・サービス業5名超、製造業その他は20名超)の事業者は1/2が基本。前回までのように付随の計画書提出で補助率がアップするとの内容は盛り込まれていません。
賃上げ未達の補助金返還ルールはちょっとややこしい
これまでは主に加点要件について解説してきましたが、今回の基本要件として新たに加わった、給与総額年率1.5%アップかつ、最低賃金+30円。
達成できなかった場合には、所定のルールに基づいて補助金の返還が求められるという結構辛いルールとなっています。
ただし、事務局公募要領に記載された今回の公募要領(未確定)を確認すると、未達の場合でも返還せずともよい条件も記載されています。赤線の部分がポイントですね。
ザックリ説明すると、以下のように解釈できます。
- 給与は引き上げて欲しいが、付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)が基本要件で定めてある計画通り(年率換算で3%以上)伸びなかった場合は、給与総額上昇が1.5%未満でもOKとする
- 実績として付加価値額が年率1.5%にも満たない場合は、給与支給総額が上がってなくともOKとする
- 退職や育休、その他の理由等でどうしても給与支給総額が下がってしまう場合は、一人あたり伸び率で算定してもOKとする
- 天災など、どうしようもない理由の場合は給与や最低賃金が上がってなくともOKとする
ポイントとして挙げたルールにはさらにパターンがあると思われるので、補助金返還ルールについては別の記事で詳しく解説していきたいと思います。
まとめ
ということで、今回はものづくり補助金の事務局公募要領で触れられていた、ものづくり補助金の公募内容について解説してきました。今回判明した内容と、2019年12月に発表された経産省のPR資料をまとめると、ポイントは概ね以下のとおりです。
- これまでの年2回の公募から公募回数は増加。年4回程度の公募になる。
- 加えて、向こう3年間は制度継続。事業者はせかされることなく、補助事業に取組みやすくなる
- 今回から電子申請限定。プラットフォームサイトであるJgrantsから申請する。申請するためには、あらかじめgBizIDで事業者IDの取得が必要
- 最も応募数の多い「一般型」の補助率は1/2(最大1000万円)。小規模事業者は2/3
- 昨年まで存在していた補助率1/2を2/3にアップさせる条件はなし(現在のところ確認できる資料なし)
- 申請に関わる基本要件として、付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)年率3%、人件費については1.給与支給総額年率1.5%向上、かつ2.地域内最低賃金+30円を達成する事業計画書策定が必要
- 人件費については、計画に盛り込むことに加え、達成しないとルールに基づき補助金を返還するルールあり(ただし、条件によっては変換しなくともよいケースも)
- 加点要件は、以下4点
- 経営革新計画の取得
- 小規模事業者、もしくは第2創業後5年未満
- 2019年激甚災害指定地域事業者、または事業継続力強化計画認定事業者
- 人件費を基本要件以上に増加
人件費上昇に関わる基本要件と加点要件が加わった点が、昨年と大きく異なる点ですね。
また、補助率が基本1/2になっている点も大きな変更点です。
(これについては、2/3にアップする条件が追加されてくるかも知れませんが。)