抜本的な見直しはあるのか?「事業再構築補助金」と「ものづくり補助金」の今後

2021年11月1日朝日新聞より

経産省の補助金、「リピーター」が3年で15% 財務省が問題視(外部サイト)

この記事では、事業再構築補助金とものづくり補助金の問題点について触れられています。もう何年間も同じ制度で運用している「ものづくり補助金」。1兆円を超える規模で、中小事業者の事業転換を最大1億円まで補助する「事業再構築補助金」

記事ではそれぞれの問題点を指摘しています。記事を見ると「確かにそうだね」と思える点もあれば、「え?そもそもそこが問題なのか?」という点もありましたので、ここでは簡単に記事の解説と僕なりの意見をお話ししたいと思います。

※ここでお話しする内容は11月1日にfacebookページに記載した内容とほぼ同じです。facebooktwitterではよりタイムリーな情報をアップしていますのでフォローしていただけると嬉しいです!

以下では「事業再構築補助金」と「ものづくり補助金」それぞれ気になった点を挙げて、僕の意見も含め説明していきたいと思います。

【事業再構築補助金】飲食店にフォーカスするのであれば別の手があるはず

 

補助金の受給が決定した企業の業種をみると、ニーズがあるはずの飲食・宿泊業が2割程度にとどまっており、「真に必要な企業に適切な支援が行き渡る見直しが必要」だと指摘した。

ここでいうニーズという言葉が何を指しているのかわからないのですが、そもそも売上が大幅減orストップしている飲食店を支援する策として再構築補助金は違うと思っています。

理由

  • 再構築補助金は「リスクをとってでも業態転換等、新たな事業展開を行う」という主旨の補助金だが、実際にはある程度余裕がある企業でないとリスクテイクできない
  • ここ1年強の飲食店の課題は「いかに維持するか」。実際リスクテイクできる事業者は少ない。また、業態転換といっても手は限られる。実際、製造業等の業種の申請数/採択数のほうが多いのはそういった要因もある。
  • 加えて飲食業は事業計画書の策定経験が他業種と比べ少ない印象。採択を受けるための計画書策定のハードルも高い
なので、そもそも事業再構築補助金で飲食店を救うというのはちょっと違うと思います。
なお、一定の設備投資によって事業者が事業転換・再編していく方向は賛成。
事業なので、補助金もらおうとそうでなかろうと新たな取組みの全てが上手くいくとは限りませんし、それを前提としつつ、自社だけではリスクテイク出来ない取組みを国から採択を受け、支援してもらうことでチャレンジできる制度自体は悪くないと思っています。

【ものづくり補助金】「リピーター採択を生まないように」ではなく、効果検証の仕組みを真剣に考えたほうが良い

直近3年でみると、採択事業者のうちの15%が過去にもこの補助金を受け取った実績があり、どこまで生産性を向上させたのかみえない面もある。~中略~「補助金をもらった後、パフォーマンスの改善が見られたかを問うなど、補助金の『リピーター』を生まないような出し方を検討する必要がある」

そりゃそうだと思います。僕自身、次々と申請でき、採択されること自体は「まぁそうなのか」という感じで構えていましたが、であればこの時点で効果検証させること放棄してるのと同義だと思います。毎年新たな設備投資を行う計画で採択された事業者が、それぞれのパフォーマンスを事業ごとに分けて管理すること自体、大手企業なら未だしも、事業部ごとに管理会計を行っているケースの少ない中小企業・小規模事業者には、そこ分けるだけでもハードルが高いです。

既に8次締切分からはリピート採択制度はなしに変更

実際、ものづくり補助金の8次締切(2021年11月11日締切)分からは過去3年間に2回以上採択された事業者は、ものづくり補助金に申請することは出来なくなっていますので、この有識者会議の前に既に手を打っているというこになりますね。僕自身、この制度変更は賛成です。

効果検証の話に戻りますが、もし本当に効果検証したいなら、現在の年次報告書のフォーマットは大幅に変えなければ絶対無理だと思います。

多分この記事を書いている記者も有識者会議に出席していた有識者の方も、事業者がどのようなフォーマットで年次報告しているのか知らないと思うのですが、「設備導入により新たな製品を製造する」ことのみを前提にフォーマットが作られています。

効果というのは様々で、設備導入により製造プロセスの改善を行い原価率を下げるケースや、省力化により従業員が別の付加価値を生む事業に取り組めたことよる売上向上等、事業者にとっての効果は様々なパターンがあり得ます。

「収益納付」というルールがある都合上、一定の型にはめて効果を算定していかないと効果検証が出来ないという内部的な事情はよくわかるのですが、前述の通り、年次報告に関してはもう少し個々の事業者の事情を考慮したものにしたほうが良いと思います。

【まとめ】結局大幅な変更はないのでは?

で、最終的にどうなりそうかというと、おそらく事業再構築補助金の大幅な変更はないと思っています。2021年11月現在、既に全5回締切予定のうち4回が始まっており、ここから大幅な制度変更は難しいでしょう。事業再構築補助金で飲食店の支援によりシフトしていくには、採点時に飲食店の加点幅を大きくする等の処置しかないと思います。

とはいえ、飲食店の場合はそもそも採択されやすい「コロナ特別枠」で申請する方が多いと思います。なのでこれ以上制度を変更しても大きな効果は見込めないと思いますし、飲食店を生かしていきたいのであれば、むしろ無理に再構築をさせるのではなく、運転資金の確保など事業を維持するための施策を施していったほうが良いと思います。

そしてものづくり補助金ですが、記事にある「リピーターが多すぎる」については既に処置がされていますし、予算上は来年度(2022年度)まで予算が確保されています。今のところ2022年度がものづくり補助金の最終年度になりますので、さらにその次年度はまた違った形になるかもしれませんが、来年度いっぱいまでは大幅な変更はやはりないのではと僕自身は推測しています。

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