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事業者の思い切った事業の転換を支援する事業再構築補助金。「事業者」の中には当然個人事業主も含まれるのですが、事業再構築補助金の公募要領や「よくある質問」をみても、法人と比べやや説明不足な点があるのでここでフォローしておきたいと思います。今回は付加価値額の算定根拠について説明します。
付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費
基本的にこの算定式は変わりません。
減価償却費については問題ないのですが、ここで問題になるのが「営業利益」「人件費」の2点です。
この記事の目次
個人事業主の人件費は福利厚生費と給与賃金の合計
個人事業主の人件費については公募要領には書いていないのですが、「よくある質問」にこのような記載があります。
福利厚生費+給料賃金(⑲+⑳)
本来、人件費の構成要素である、家族への給与である専従者給与(㊳)や事業主自身の人件費ともいえる青色申告特別控除前の所得金額(㊸)は対象外となります。
あくまでも、外に支払う人件費が対象ということですね。
営業利益を求めるには利子割引料を足し戻す必要あり
ここからが少しややこしいのです。先ず一般的に法人の営業利益の算出は、以下の算定式で求められます。
法人の場合、営業利益が、そのまま項目名として決算書に示されているので特に迷うことはありません。しかし個人事業主の場合、営業利益という項目がないので何をもって営業利益とすべきか迷ってしまいますね。
ものづくり補助金のFAQで示されている
実はこの議論、事業再構築補助金と計数計画面ではほぼ類似している補助金である「ものづくり補助金」のFAQでは示されているんですね(ただし、2020年後半になってようやく示されました)。
FAQにはこう書かれています。
※ここでいう差引金額㉝は【売上総利益から経費を差し引いたもの】、利子割引料㉒は金融機関へ支払う支払利息を指しています。
ということで、営業利益を求めるには差引金額に利子割引料を足し戻す必要があるわけですが、何故そうなるのかを法人の決算書項目と比較しながら説明したものが以下となります。
右側の【法人】決算書を確認してもらうとわかる通り、本来利子割引料(支払利息)は、営業外費用扱いになるのです。
一方左側の【個人】青色決算では、経費の中に含まれていますよね。
つまり、個人事業主の差引金額(㉝)に、本来営業外費用である㉒の利子割引料を足し戻さないと、法人の定義と同じ営業利益にはならないのです。
ということで少しややこしいのですが、早い話、ものづくり補助金の定義と合わせておけば良いと考えます。もう一度掲載します。
おそらく利子割引料を足し戻さなくとも問題ないと思われるが・・・
と、ここまで、個人事業主の営業利益算定は、利子割引料を足し戻す必要があるという旨の説明をしてきましたが、2021年5月29日現在、事業再構築補助金の公募要領にもFAQにも、個人事業主の営業利益算定についての説明はありません。
数字に関する部分は非常に重要なので正確に明記して欲しいところなのですが、結論的には、差引金額㉝をそのまま営業利益として考えても問題ないとは思います。
※明記していませんし。
ただ、類似のものづくり補助金では個人事業主の営業利益の定義は示されていますし、法人と同じ扱いで考える場合、利子割引料を足し戻さないと正しいとは言えません。
まとめと注意点
ということで、事業再構築補助金における個人事業主の付加価値額について説明してきました。
最後にもう一度まとめます。
- 付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費(⑱)
- 営業利益=差引金額(㉝)+利子割引料(㉒)
- 人件費=福利厚生費(⑲)+給料賃金(⑳)
上手く整理できなければ、青色決算申告書の項目番号を確認しながら記載していけば良いと思います。