(3)事業化面②の問いは以下です。
事業化に向けて、市場ニーズを考慮するとともに、補助事業の成果の事業化が寄与するユーザー、マーケット及び市場規模が明確か。クラウドファンディング等を活用し、市場ニーズの有無を検証できているか(グローバル展開型では、事前の十分な市場調査分析を行っているか)。
※後段の文章の「クラウドファンディングの活用」「グローバル型」は割愛します。
正式な審査項目以外では、公募要領17ページにこのような記載もあります。
その2.:将来の展望(本事業の成果の事業化に向けて想定している内容及び期待される効果)
a.本事業の成果が寄与すると想定している具体的なユーザー、マーケット及び市場規模等について、その成果の価格的・性能的な優位性・収益性や現在の市場規模も踏まえて記載してください
順に見ていきましょう。
この記事の目次
市場ニーズの考慮とは、顧客ニーズの「程度」を確認できているかかどうか
ものづくり補助金では、新製品・新技術・新サービスの革新的な開発を求めています。
構図で表すとこのような感じ。
理想の姿は、新製品・新サービスが開発できている状態ですが、この状態を目指す理由は、顧客ニーズを充足するためにあるはずです。
つまり、市場ニーズとは顧客の声や要望を書く必要があると考えるのが妥当でしょう。
また「市場ニーズを考慮」とありますが、「考慮」は程度を表す表現ですから、顧客ニーズがどの程度発生しているのか、という定量的な視点で記載していく必要があります。
顧客ニーズは事実を記載することで審査員の主観を排除する
ここで必ず守っていただきたいことは、「顧客の生の声」を収集したうえで、何を開発していくのかを検討してほしいということです。
一例を挙げます。
例えば「納期を短縮してほしい」という顧客ニーズ。
納期は長いより短いほうが良いに決まっていますし、自社にとっても、納期短縮化によって生産性がアップすることは容易に想像できます。
さて、そうなると「顧客に確認せずとも納期短縮に沿った取り組みはすべき」、という判断で良いのでしょうか。
答えはNOです。
様々な課題に対して解決策を検討していく場合、その課題の大きさや緊急度に沿って解決策の優先順位づけを行う必要が出てきますよね。
確かに納期短縮の解決策を講じることは、一見誰にとっても良さそうにみえますが、その課題の大きさや緊急度が解らないと、本当にその解決策が今必要であり、そして将来の成長につながるのかどうか判断できません。
つまり、課題の大きさや緊急度を客観的に説明できなければ、本審査項目である「市場ニーズを考慮している」
ことの判断が困難になるということです。
そして、それに対する対応策は「顧客の生の声」を収集することでしかありません。
顧客からの生の声を定量的に示すことが出来れば、そこから課題の大きさが判断できますし、事業化後にどの程度経営数値に効果が出るかについても推計しやすくなります。
そして、「顧客の生の声」を記載することによる審査上の最も大きな効果は、「審査員の主観の判断を排除できる」ということです。
事実である明確な顧客ニーズを記載することは、審査員の「本当にそうなのかなぁ」や「(私(審査員)の知ってる限り)そこまでニーズはないだろう」といった主観をなくすことができ、無用な審査員のマイナス判断を避けることが出来ます。
どの程度の顧客からどのようなことを言われているのか、実現できればどの程度の顧客数・売上・利益に寄与できそうか、という視点で市場ニーズを記載していきましょう。
何にしても、必ず顧客の生の声を収集し、記載していくことが大事です。
マーケットと市場規模をどう整理していくか
そして後半部分では、以下のような表現が出てきます。
補助事業の成果の事業化が寄与するユーザー、マーケット及び市場規模は明確か
ユーザーに関しては前述の「市場ニーズの考慮」とカブっていますので割愛します。
よって、ここで整理すべきは「マーケット」と「市場規模」です。
言い換えると「対象市場」と「その市場規模」となります。
商圏内のマーケットは極力自社で集めた情報を記載する
先ず、自社が対象とするマーケットはどこなのか。
手順としては、新たな事業開発で対象となるターゲットは誰なのかを特定し、次にそのターゲットから直接声を集めてみましょう。
一例として、輸入車の整備市場におけるマーケットの構図について以下に示します。
「市場ニーズの考慮」の部分で説明してきたことと重複しますが、先ずは顧客の生の声の収集です。
「誰が何に困っているのか」を明文化できるようにしておくことが大事であり、そのためには顧客の生の声(事実)を活かすことで、審査員の無用な判断の介入を防ぐことができます。
マーケットが明確になれば、そこから自社商圏における市場規模の推計も可能となりますので、併せて市場規模も考えてみましょう。
マクロである市場規模はトレンドと併せて記載する
申請者が書く市場規模の記載でよくあるケースが、市場規模の回答としてマクロ市場の数値を記載して終わっているパターンです。
例えば国内の「○○出荷台数」「○○生産高」など。
これらは経産省の工業統計調査などを確認すれば容易に記載していくことが可能ですが、もの補助(あるいは一般的な事業計画書)の申請書に記載する内容としては、それだけでは不十分です。
事業計画の目的は、自社の経営を今後どうしていくべきかに論点を集中させるべきですし、特にもの補助に関しては、向こう3~5年の自社の新規事業について触れていくべき計画書です。
そういった意味から、市場規模はあくまでも自社の経営に関係する市場について重点的に記載していくべきでしょう。
もちろん、参考としてマクロ市場の規模も掲載しておくことで、大きな意味で自社の対象とする市場の状況がどうなのかを判断することもできますので、記載しておくこと自体は良いことだと思いますが、「それで?」と問われてしまうような記述は適切とは言えません。
これに対応するには、「市場規模は○であり、○のような傾向である。自社のターゲットについては・・・・」といったトレンドや「だから自社にとってどうなのか」といった部分まで踏み込んだ説明をすることが考えられます。
いずれにせよ、市場規模については、あくまでも自社商圏の市場規模を丁寧に書くべきであり、調査が簡単だからといってマクロ市場だけに触れるのは危険だとお考えください。
まとめ
(3)事業化面②の問いは以下でした。
事業化に向けて、市場ニーズを考慮すると共に、補助事業の成果の事業化が寄与するユーザー、マーケット及び市場規模は明確か
以下にポイントをまとめておきます。
まとめ
- 「市場ニーズの考慮」は「顧客ニーズの程度」に読み替える
- 顧客ニーズは、「顧客の生の声」を収集することから始める
- 「マーケット」「市場規模」は、「対象市場」「市場規模」
- 「顧客の生の声」の収集から「マーケット」と「市場規模」を推計する
- 市場規模で「マクロ市場の規模」だけを記載するのは、ほとんど意味がない。対象市場の規模を必ず入れる
- 「マクロ市場規模」を書くのであれば、自社の経営に結びつくような文章「だから自社にとってどうなのか」という論点で記載していく
ターゲット市場を正しく把握することは、自社の事業開発にとって非常に大事であり、事業計画を策定していく中で、外すことは出来ない作業となりますし、審査の論点としても重要となります。
何故、この事業開発をする必要があるのか。先ずは顧客の声から集めてみることをお勧めします。