「革新」の定義は公募要領には書いていない
そして次ですが、ここから理解すべきは、「革新的」という単語の意味です。
いったい「革新的」とは何を指しているのでしょう。
「開発」に関しては前述のとおり「解決策」を指していますので、さほど深読みする必要はありませんが、問題は「革新的」という表現です。
そこで、辞書で調べてみると「革新」や英語訳の「innovation」について、次のような説明があります。
古くからの習慣・制度・状態・考え方などを新しく変えようとすること。特に,政治の分野で社会体制・政治組織を新しく変えること。また,変えようとする勢力。
出典:三省堂 大辞林
イノベーションとは、それまでになかった技術や仕組みを打ち出すことで既存の仕組みや在り方を一変させること、といった意味で使われる語である。
出典:IT用語辞典バイナリ
また、「イノベーション」という言葉を初めて定義したオーストリアの経済学者、シュンペーターは、イノベーションを以下の5つの類型に整理しています。
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- 新しい財貨の生産
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- 新しい生産方法の導入
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- 新しい販売先の開拓
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- 原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得
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- 新しい組織の実現(独占の形成やその打破)
どうでしょう。何となく「既存とは違う新しい何かである」という雰囲気は伝わるものの、これだけ表現の幅や深さに違いがあると、革新とは明確に「コレだ!」という解にまで結びつくところまではいきそうにありません。
つまり、いくら言葉の定義を外から引っ張ってこようとしても多様な解釈があり、結局のところ、ものづくり補助金においての「革新的」の意味はよく解らない、というのが実際のところなのです。
「革新的」とは自社商圏や業種内で目新しいもの
そこで、色々調べてみると過去の中小企業庁のインタビューではこのように語られていました。
「【革新的サービス】は、自社になく、他社でも一般的ではない、新たな役務を取り込んだ(取り入れたも含む)新サービス、新商品開発や新生産方式」です。
「革新的」かどうかの判断基準は、例えば、新しい設備・機器を導入しても、『当社比』で革新が行われたというようなことではあてはまらず、『地域の先進事例』や、『業種内での先進事例』にあたるかどうかなど、『相対的』な視点から、革新性を示さなければなりません。
ただ「性能の良い機器を買う」といったような内容では、採択にはつながりにくいということですね。
うーん、これは良さそうです。
中小企業庁は、ものづくり補助金を実施する経済産業省の組織ですので、「革新的」の定義は概ねこのインタビュー記事が正式見解という理解で良いでしょう。
まとめますと、革新的とはこう整理できるかも知れません。
ちなみに、この中小企業庁の担当者が言われている定義ですが、各都道府県が先進的な中小企業の取り組みを認定する制度である「経営革新計画」の「革新」の定義を説明しています。経営革新計画を取得されたことのある事業者であれば、「あぁ、経営革新計画と同じだね」と感じられるのではないでしょうか。
「開発」自体はあくまでも手段
繰り返しになりますが、重要なのは「革新的な理想の姿」であり、決して補助事業期間に導入する設備のスペックやその他の取組みそのものではありません。
設備導入自体を目的化してしまうと、「革新的な理想の姿」を見失いがちになります。
先ずは「革新的な理想の姿」を描いてみることが大事ということですね。