(2)技術面②開発における課題と補助事業の目標とは

B!

(2)技術面②では、以下の点が問われています。

試作品・サービスモデル等の開発における課題が明確になっているとともに、補助事業の目標に対する達成度の考え方を明確に設定しているか。

 

ここでのキーワードは、「課題」「補助事業の目標」「達成度の考え方」です。

これらを明確に設定しているかどうか、という点が問われています。

課題の意味を正しく理解する

ひとつ前の審査項目

こちらでも説明しましたが、「課題」とは理想の状態と現状のギャップを埋めるための方針や取り組みのことを指しています。

あらためて「課題とは何か?」について、もう一度考えてみましょう。

 

「課題」という言葉を理解するには、これと混合しがちな「問題」の意味を捉えておく必要あります。

図のとおり、「問題」とは「現状」と「理想の状態」のギャップを示すものであり、○が出来ていない、現状の設備では○が達成できない)等で表現される「状態」のことを指しています。

「問題」は状態そのものを指しているので、それを克服する必要が出てきます。

これに対応するのが「課題」です。問題を解決するためにどうするべきか、というこれから成すべき事柄を指しているものになります。

「べき論」といったほうがよいでしょうか。

「課題」を「べき論」と捉えると、「○が出来ていない」といった否定形ではなく、「○をするべき」といった前向きな表現となることが解ると思います。

「課題」はべき論「解決策」は具体的な取り組み事項

次ですが、「課題」と「解決策」も混合しがちです。

課題が「べき論」であることに対して「解決策」は、より具体的な取組み事項となります。

「策」というからには、その策の通りに行動すれば、問題が解決されるといった具体性の強い表現が必要になります。

※解決策は、(2)技術面③で問われている審査項目ですが、この記事では割愛します。

「課題」はストーリーの中の一部分として説明する

これまで述べてきたように、「課題」は突然発生するものではなく、手順を踏んではじめて認識されるものです。

理想の姿である「新サービスや製品」が完成している状態に対して今という「現状」がある。現状と理想の姿とのギャップである「問題」から「課題」が導き出される。といった感じです。

これを踏まえると、「課題」については例えば以下のような書き方が考えられますね。

顧客ニーズを「現状」と捉えると、それを満たした姿は理想の姿になりますよね。

そこに問題が発生し、初めて課題が認識されます。

つまり、このような流れで課題を説明しておくことで、初めて理路整然とした「明確な課題」をアピールすることができるのです。

なお、このうち顧客ニーズについては「定量的な裏付け」を書いておくことが重要です。

あいまいな表現にしてしまうと、審査員の主観で判断されてしまう危険性があります。悪く判断されてしまうと最悪ですよね。審査員の主観を排除するためにも、何かにつけて必ず裏付けを記載していきましょう。

次に、後半の文章を読み解いていきましゅう。

補助事業の目標、目標に対する達成度の考え方とは?

前半の文章では「課題の明確さ」が問われていましたが、後半の文章では補助事業の「目標と達成度の考え方」が問われています。

試作品・サービスモデル等の開発における課題が明確になっているとともに、補助事業の目標に対する達成度の考え方を明確に設定しているか。

問われているのは「補助事業の目標」ですから、補助事業期間中の目標を記載する必要があります。

なお、本審査項目の文章は「課題の明確さ」と併せて「補助事業の目標に対する達成度」を同時に聞いていますが、この1文をまとめて読み込んでしまうと見誤る可能性があります。

 

この図を見てわかるよう、補助事業期間の目標と直接対応するのは、課題ではなく解決策です。

つまり、補助事業の目標とその達成度の考え方を記述するには、課題を踏まえ「解決策」に踏み込んだ記述が必要ということです。

そして、その目標を設定した理由達成できる理由についての根拠を問われていると考えたほうがよいでしょう。

ではどうする?目標と達成度の考え方は一覧表にまとめてみる

では、どうやって書いていけばよいのか。

僕の推奨は、先ずは課題の解決策を並べてみることから始めることです。

課題を解決するための解決策=「具体的な手法や手順」を記載し、その解決策の目標と考え方を記載していくという順で記載していきます。

多くの申請者は「解決策=設備の導入」と考えられているかもしれませんが、それだと単なる課題の指摘(設備を入れるべき)になり、これだけだと「解決策」というには少々粒度が粗く捉えられてしまうが可能性ありますね。できれば「設備の導入」から、もう一段掘り下げた解決策を項目として洗出し、それらの目標を設定するとよいでしょう。

例えば、こういった書き方が考えられます。

事業化のために必要な事項を並べる→その目標管理を記載する

ここでも重要になるのは、極力数字で表現するということです。

目標を数字で表し、その根拠を記載していくという書き方で表現していくと良いですね。

達成度の考え方とは「何故その目標値なのか」「事業化に向けた適切なな指標になっているか」の説明。高い目標値を求めているものではない

この問いでは、目標に対する達成度の考え方を「明確に」記載することを求めています。

「明確に」ですから、記載した目標値に対して、それに対応する理由を「必ず記載する」ことが重要です。

次に「達成度の考え方」ですが、「達成度」は「度」とあるようにその「程度」を示しています。

その設備を導入し事業化するためには、「何のどの部分がどのような程度になる必要があるのか」という意味で捉えて記載していきましょう。

ここで誤りがちなのは、「高い目標を記載したほうが審査時に有利だろう」という考えですがこれは間違いです。

もちろん高い目標を掲げることは良いことですが、ここで聞かれているのはあくまでも「明確さ」ですから、先ずは明確な目標と明確な理由を書くことを重点的に考えてください。

何故、その目標値を設定したのか、という明確な理由があれば先ずは十分です。

まとめ

あらためて本審査項目を以下に示しておきます。

 

試作品・サービスモデル等の開発における課題が明確になっているとともに、補助事業の目標に対する達成度の考え方を明確に設定しているか。

この審査項目は、前半の文章と後半の文章とで、回答すべき論点が微妙に異なってきますので注意が必要ですね。
まとめ
  • 課題は全体のストーリーの一部として説明する
    • 顧客ニーズや理想の姿を示したうえで問題を記述し、どうすべきかを記載していく
  • 補助事業の目標と考え方を述べるには、解決策を列挙することから始める
    • 解決策として多い「設備の導入」は、それだけでは不十分。もう一段掘り下げて記述する。
    • 具体的には、その設備導入で補助事業期間中に何を達成すべきなのかを列挙する
    • 達成したい項目に関しては、必ず目標値を記載する
    • 目標値は極力数字で記載する
    • 達成度の考え方は「なぜその目標値なのか」の理由を記載する

以上、この審査項目は短い1文だけのシンプルな文章になっていますが、回答としては「課題」の部分と「補助事業の目標」の部分で二つの回答が必要です。

一見、何をどう回答すればよいか解り難いと思いますが、全体の構図の理解さえできていれば、さほど難しくはありません。

本審査項目だけではありませんが、それぞれの審査項目に答えていくには、結局は最初に描く全体のストーリー構成が大事ということですね。

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