ものづくり補助金には、「ものづくり技術」と「革新的サービス」の2つの申請類型があります。
特に製造業の方は「ものづくり技術」で申請される方が多いのではないでしょうか。
しかし、ものづくり技術、つまり技術面に特化して物事を考えてしまうと思わぬ落とし穴にはまってしまう可能性があります。
そんなお話をしたいと思います。
※2020年10月追記:今年から「革新的サービス」「ものづくり技術」という2類型は、それぞれ分解され4つの類型に整理されています。
ただし、元々の2類型を分解して4類型にしているだけですので、本記事はそのまま読み進めていただいて問題ありません。
この記事の目次
ものづくり技術に直接的に関係するのは、(2)技術面①のみ
公募要領の(2)技術面①には以下のような記載があります。
【ものづくり技術】については、特定ものづくり技術分野の高度化に資する取り組みであるか、が問われています。
中小企業庁:中小企業の特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針 - www.chusho.meti.go.jp |
つまり【ものづくり技術】で申請するには、国が設定した高度化に資する取り組みかどうかを申請書上で示していく必要があるということです。
前提は新製品・新技術・新サービスの革新的な開発
しかし、この審査項目の冒頭にはこう記載があります。
①新製品・新技術・新サービス(既存技術の転用や隠れた価値の発掘(設計・デザイン・アイデアの活用等を含む))の革新的な開発となっているか
つまり、ものづくり技術分野に資する取り組みかどうか、という以前に革新的な開発であるか、という部分が大きな論点とされているのです。
革新的な開発については、以下に説明を記載していますので、興味のある方はご覧になってください。
顧客がいないと話にならない
自社の製造技術を高度化していく取り組み自体は審査項目の論点ですし、記述していく必要はあります。
しかし、それよりも重要なのは技術の高度化を行わなければならない理由や目的です。
製造業の方が申請書を書く際に陥りがちなのは、技術面の記述に特化しすぎて、その理由や目的があいまいであったり、記述が薄くなりがちであることです。
そもそも技術を高度化する目的は、「顧客ニーズがあるから」のはずで、単なる自己満足では審査には通りません。
例えば、(3)事業化面の以下審査項目
これらの審査項目は顧客を意識した記述が必要です。
高度化したい、という自社の思いと、事業化するにあたり、顧客が求めているものかどうか、を両方とも満たさなければ、全審査項目にまんべんなく答えていく際につまずく可能性が出てくるのです。
ものづくりの先にあるのは革新的サービス
一方、革新的サービスでは感覚的に「顧客ニーズ」を意識したところから始まります。
革新的サービスでは、以下の10項目のいずれか、もしくは複数を満たす取り組みであることが求められています。
このうち、「付加価値の向上」に関わる8つの項目は「顧客ニーズ」を意識している、ということが感覚的にもわかると思います。
そのようなことから、「革新的サービス」で申請される事業者は、自然と顧客を意識したストーリーを着想しやすくなります。
「革新的サービス」は「ものづくり技術」を内包している
では、「ものづくり技術」で申請するとき、どうのように着想していくべきなのか。
以下の構図をご覧ください。
本来、「ものづくり技術」で申請される場合であっても、その先には基本的には革新的サービスで示された10の手法のいずれかを満たす取り組みとなるはずです。
例えば、製造業の設備導入でよくある「外注の内製化による納期短縮」は、「提供プロセスの改善」にあたりそうです。
また、納期短縮であれば、それは顧客要望を満たす「顧客満足度の向上」にもあたるでしょう。
つまり、「ものづくり技術」で申請するにしても、この革新的サービス、つまり顧客を意識したうえで、自分たちの取り組みがこの手法のどれに当てはまりそうなのかを考えることが、全体の骨子作りやストーリー作りには重要なのです。
製造業でも「革新的サービス」で提出して全く問題ない
公募要領で提示されている革新的サービスの10の手法は、「中小サービス業の生産性向上のための具体的手法」と紹介されていることから、「革新的サービス」で申請できるのはサービス業でなくてはならないと考えられている方も多いと思います。
しかし、実際は関係ありません。
まとめ_製造業であっても革新的サービスを意識した考え方が重要
最終的に、「ものづくり技術」か「革新的サービス」で出すかは、申請者の判断となりますが、少なくとも「革新的サービス」はどの業種でも提出することが可能です。
「ものづくり技術」で提出する場合は、特に「ものづくり技術の先にどのような理想の姿があるのか」を定めておかないと、全体のストーリーがあいまいになったり、技術面の記述に寄りがちになったりと、バランスの悪い申請書になる可能性があります。
そのようなことから、僕は「ものづくり技術」で申請する場合でも「革新的サービスを開発する」というストーリー構成にしています。